互換性・価格・操作感に優れた
おすすめの3D CAD導入ガイド
3D CADの導入で重要なのは、目的に合った「ちょうどいいレベル」のソフトを選ぶこと。とはいえ、ローエンドからハイエンドまで幅広いラインナップがあり、どう選んでいいいのか分かりにくいのも事実。
そこで押さえておきたいのが、データの互換性・価格・操作感の3つ。このサイトでは、中小製造業にとって必要十分な機能を備えるミドルレンジの製品から、おすすめの3D CADをご紹介しています。新規導入や乗り換えの参考にぜひお使いください。
3D CADの導入で重要なのは、目的に合った「ちょうどいいレベル」のソフトを選ぶこと。とはいえ、ローエンドからハイエンドまで幅広いラインナップがあり、どう選んでいいいのか分かりにくいのも事実。
そこで押さえておきたいのが、データの互換性・価格・操作感の3つ。このサイトでは、中小製造業にとって必要十分な機能を備えるミドルレンジの製品から、おすすめの3D CADをご紹介しています。新規導入や乗り換えの参考にぜひお使いください。
公開日: |更新日:
2D CADより扱いが難しく、決して安いものではない3D CAD。導入に失敗したくないなら、幅広い互換性を持ち操作感の優れたソフトウェアから見つけるのがベター。200万円以上するハイスペックモデルでなくても、中小製造業に必要な機能は40~120万円と幅広いミドルレンジでも十分に備えています。
このサイトでは、そんなミドルレンジの3D CADソフトウェアをご紹介しています。
中小製造業であれば、対応する拡張子が合計20以上、価格は40~120万円程度、そして3Dモデリングならではのパラメトリックモデリング(パラメーター入力による設計)機能を有しつつも、マウスやペンタブで直観的な操作が可能なソフトウェアが狙い目です。
ここで紹介する3つの3D CADは、すべてその条件を満たしているおすすめのソフトウェアです。それぞれ「互換性の幅広さ」「低価格」「直観的な操作感」の面で突出した強みを持っているので、重要視したいポイントに合わせて選んでみてください。
製品名 |
幅広い拡張子に対応できる
IRONCAD
互換性を重視したいなら |
必要十分の機能をカバーし
Alibre Design
低価格を重視したいなら |
誰でも直観的にデザインできる
ZW3D
操作感を重視したいなら |
---|---|---|---|
主な用途・ 得意分野 |
自動機設計・設備機械設計 | 機械装置・金型の設計 | 機械装置・医療機器・家電・プラスチック金型の設計 |
対応フォーマット | インポート:26 エクスポート:33 |
インポート:18 エクスポート:11 |
インポート:24 エクスポート:24 |
ライセンス価格 | IRONCAD スタンドアロンライセンス 1,135,970円(税込) |
Alibre Design エキスパートライセンス (メンテナンス込み) 535,000円(税込) |
ZW3D プロフェッショナルライセンス 946,000円(税込) |
操作感の特徴 | マウス操作のモデル作成が簡単で、パラメーターを使った精確な調整と組み合わせ、求める3Dモデリングを実現できます。 ワンクリックでレンダリング環境にデータ転送できる便利さも備えているのも強みの一つです。 |
いつでも変更可能なスケッチ寸法やジオメトリ拘束など、パラメトリックモデリングをサポートする機能が搭載されています。 曲面形状の部品に対しては、マウスを使ったサーフェスモデリングでスピーディーに設計可能です。 |
ミドルレンジながら、ソリッドとサーフェスを掛け合わせたハイブリッドモデリングを直観操作で使えるのが最大の強み。 さらにCAE・CAMを組み込んだオールインワン型で、一連の作業をシームレスに実行可能です。 |
各社詳細 |
3D CADを導入したことでどのような効果を得られたのか、ジャンル毎にまとめています。3D CADそれぞれ特徴が異なるのは言うまでもありませんが、3D CAD導入のニーズもまた、それぞれ異なるものです。3D CADを導入したことで、何が変わり、何を得られたのかについて、いくつかの事例をご紹介していますのでご覧ください。
機械設計の現場で、IRONCADとSOLIDWORKSを導入した2社の事例をご紹介。1つは、業務効率改善として3D CADを導入した結果、効率化が進み、難易度の高い設計も可能になって受注案件も増えた事例。もう1つは、バブル期以降売り上げが伸び悩みから、ものづくりの見直し・改善に向けて3D CADを導入。その結果、売り上げが10倍になった事例です。
治具設計の現場で、図脳CAD3D V2とIRONCADを導入した4社の事例をご紹介。中間ファイルでは正しくデータを読み取れずに工数がかかっていた現場で3D CADを導入した電子部品メーカーの事例、3D CADが必要になるたびに他部署から借りて使っていた自動車メーカーが自部署で導入した事例など4例をまとめています。導入した結果は?
金型設計の現場で、図脳CAD3D V2などを導入した3社の事例をご紹介。履歴や拘束条件が邪魔をして意図した編集ができないという、自社の作業内容に合わない3D CADを使っていた鋳型設計・鋳造メーカーの事例。発注元からのデータをネイティブで受け取るために、取引先と同じ3D CADを揃えてコストがかさんでいた金型設計・金型受託を行う会社などの事例をまとめています。
生産設備設計の現場で、IRONCADを導入した2社の事例をご紹介。業務の見直しで、将来を見据えた環境構築の一環として導入した大型産業機械の設計製造の大手企業の事例や、3Dのデータを見て2Dで想像したり、変換する作業をしていた会社が必要に迫られて3D CADを導入した事例をまとめています。
CAE(比較検証・シミュレーション)における実際の使用例をご紹介。金属材料に比べるとまだまだ計算手法が確立されていない樹脂の力のかかり具合等を計測したり、自動車の設計において空気抵抗のシミュレーションをしたり、CAEを自動化に近い形で活用することで、設計等の最適化を行う例などをまとめています。
Google検索「3DCAD」の結果から、用途に製造業が含まれている3DCADソフトウェア39種類を抽出。その内、生産技術の現場で使われていることが公式サイトに明記された6製品をご紹介します。(調査日:2023年11月3日)
富士通が提供している機械装置向けの3D CADです。さまざまな分野の大規模機械装置の設計に対応できるよう、100万部品を0.2秒で処理する高速エンジンを搭載しており、開発にかかる作業時間を大幅に節約できます。
装置や治具の設計開発に用いられるミドルレンジの3D CADです。初心者からベテランまで扱えるよう独自機能を複数搭載し、従来のシステムでは対応が困難であった構想設計もスムーズに行えるよう考案されています。
IRONCAD スタンドアロンライセンス
1,135,970円~(税込)
参照元:サイバーエース(https://www.c-ace.net/about/soft/ironcad.html)
フレキシブルな設定幅が魅力の3D CADとして、試作モデルや新規製品の開発作業などをサポートしています。世界規模のユーザーコミュニティがあり、高レベルの技術を備えた専門家同士の交流が盛んなことも特徴です。
SOLIDWORKS Standard
1,138,500円(税込)
SOLIDWORKS Professional
1,362,900円(税込)
SOLIDWORKS Premium
1,824,900円(税込)
参照元:CAD SHOP(https://www.cadshop.jp/item_solidworks.html)
3次元モデルから2次元図面の作成を可能にするなど、データ互換性に優れている3D CADソフトです。ハイエンドと同じカーネルを搭載しつつ、リーズナブルな価格設定で優れたコストパフォーマンスを実現しています。
3D CADとしてだけでなく、CAMやCAEといったシステムも備えた総合ソフトウェアです。3D CADとしてはミドルレンジのダイレクトモデリングを特徴としており、設計から製品化まで一元管理することができます。
1990年に日本国内で正規代理店が誕生して以来、30年の販売実績を持つ3D CAD/CAMソフトです。2次元製図機能も標準で搭載している複合システムです。
先に生産技術の現場での用途にマッチした6製品をご紹介しましたが、ここではそれ以外の33製品をご紹介しています。ソフト選びの参考にしてみてください。(調査日:2023年11月3日)
フランス製の3D CADとして、全世界的にシェアを拡大しているシステムです。自動車業界や航空業界、電子産業、製造機械などの産業分野までさまざまな業界で採用されており、目的別にさまざまなパッケージが用意されています。
アメリカのPTC社が開発した3D CADであり、設計だけでなくCAMやCAE、データ管理など数多くのシステムと高いレベルで連携可能です。パラメトリック系3D CADながら、直感的なモデリングにも対応しています。
キヤノンが提供している国産3D CADです。設計から製造、解析まで製品開発の工程をトータルサポートしているハイエンドの3D CADであり、自由度の高いモデリングや製図モジュールなど豊富な機能が特徴となっています。
設計からシミュレーションまで、一貫対応できる3D CADです。設計者が考える「あったらいいな」が数多く組み込まれているミドルレンジのシステムであり、月額プランも用意されているなど選択肢の多さが魅力です。
製品開発に役立つ3D CADとしてだけでなく、文書の発行や各種データ管理など、製造業務をトータルでサポートする管理ツールとしても利用されています。無償版があり、導入前に自社ニーズとのマッチングを行えます。
ハイエンドの性能を、ミドルレンジの価格帯で提供するというコンセプトにもとづいて開発された3D CADです。国産企業が開発した3D CADであり、サポートなども日本語で対応してくれるため安心感が高いといえます。
3D CADとしては低コストながら、フレキシブルなデザイン力を備えていると評判のシステムです。さまざまな業界に幅広く対応できる機能を搭載しており、さらにアカデミック版があるのでビギナーのトレーニングにも利用できます。
自由曲面作成を目的として開発され、工業デザインや機械設計など様々な分野に活用しやすい3D CADです。ビジネス版だけでなくアカデミック版が提供されており、3D CADを学ぶ人やビギナーにとっても扱いやすい点が特徴です。
SketchUp Proは建築業界やインテリア業界で知名度の高い3D CADです。イメージをそのまま反映してモデリングできることが特徴である一方、精密設計に関しては従来の3D CADと比較して応用力が低いというデメリットもあります。
製造業向け3D CADとして開発されており、工業部品や機械設計を得意としている3D CADです。3Dモデルだけでなく、2D図面の作成にも対応しており、サブスクリプション契約によるサポート体制も充実しています。
金型ベース加工業界に最適化された業界特化型3D CADです。メーカーごとの公差情報を色分けによって視覚化している上、3Dデータがそのまま2次元投影されるので、2D図面の作業効率を大きく向上させることができます。
3D CADを使う上で、ユーザーから多く寄せられる不満やリクエストをもとに開発された3D CADです。2次元設計をする感覚で操作できる上、業種・業界を問わず幅広い分野の設計業務や使用部品のリスト化に使えます。
フィーチャーでなく、基本となる4つのコマンドを組み合わせて、イメージ通りのダイレクトモデリングを行える3D CADです。様々な3D CADとのデータ互換性に優れており、構造設計や解析モデリングにも活用できます。
3D Systems社が開発した3DCAD/CAMです。金型設計・製作に必要な機能をまとめて搭載しており、直感的な操作によってさまざまな工程を一括管理しながら、個々の作業を効率化できます。
チェコ共和国の企業が1988年に開発したCADシステムです。3DCADと2DCADの特性を兼ね備えながら、導入コストや運用コストの軽減を重視されていることが特徴です。
VariCAD ライセンス
123,000円/年(税込)
アップグレードライセンス
58,300円/年(税込)
RADANはアメリカやヨーロッパなど、世界中の企業で導入されている3DCADです。2DCADやマルチCAMなど、機械設計に必要な機能をトータルで利用できます。
創業1938年の工作機械メーカーが開発し、1985年に発売されたCADシリーズ「MYPAC」には、標準で3DCADと2DCADの機能が搭載されており、さらに複数のアドオンで機能を拡大できます。
2次元/3次元が共存するだけではなく連携も実現したCADシステムです。アセンブリ対応で、図面から3Dモデリングが簡単にできます。構想設計では2次元CADで行い、3次元CADを使って干渉チェックも可能です。他にもアセンブリデータから一括で組図と各部品図の作成をはじめ、補正や編集など多彩な機能で設計者の設計環境をサポートします。
Onshapeは、快適なリモートワークによる設計環境を作るクラウド型の製品開発プラットフォームです。2020年5月時点、全世界5,000社のモノづくりに携わる業界で導入されています。クラウド型なので高スペックのパソコンを導入しなくても問題ありません。リアルタイムによるデータ共有で、バージョンの整合性を気にすることから解放されます。ハードウェアの定期アップデートも意識せず、オフィスに限らず、自宅や外出先でもインターネット環境さえあればアクセスして作業を行えるのが強みです。
フランスのGO2camInternational社が開発した3DCADCAMシステムであり、セイロジャパンが代理店として提供しています。機械部品加工向けのシステムとして開発されており、初心者でもスキル修得を進められるよう分かりやすい操作性となっています。
金型製造業界に特化した3DCAD/CAM/CAEソリューションです。金型の設計や開発、製造などに幅広く対応しており、直感的な操作に適したシンプルなメニューやアイコン表示に加えて、柔軟なカスタマイズで作業環境を効率化できます。
多くの自由曲面を持つ3Dモデルの作成や修正が可能であり、ソリッドとサーフェスの混在モデリングにも対応しているハイブリッド3DCADです。工業デザインや意匠デザイン、金型設計など幅広く活用できます。
2DCADの作図機能を移植された3DCADであり、2D図面を読み込んで3Dモデルの作成を進められます。直感的な操作性に優れており、3DCAD初心者でも専門SEがリモート環境で操作法をサポートしてくれるため安心感があります。
ベルギーで開発された3DCADシステムであり、日本語を含めた15言語(2021年7月時点)に翻訳されて活用されています。2Dデータと3Dデータの連携はもちろん、海外での使用時にも日本のライセンスを使用可能です。
KEYCREATORは2D平面図や3Dモデルに対応したCAD/CAM一体型のシステムであり、全ての製品タイプでワイヤーフレームやソリッド、サーフェスなどの機能が搭載されています。他社製品との互換性も重視されており、複数のデータに対応していることもポイントです。
オートデスクが開発したCAD/CAM/CAEなどをコレクション化している、グローバルスタンダードの総合CADシステムです。2DCADや3DCAD、さらにクラウドストレージなど様々な機能を備えたソフトウェアやサービスが任意に選択できるようになっており、自社のニーズに応じて必要なCAD環境を自由に構築していくことができます。また、専任スタッフによるサポートサービスも充実しています。
コーレルが提供しているCADシステムであり、2021年には「CorelCAD 2021」が発売されました。2D図面から3Dモデルを自動作成したり、3Dモデルをベースとして高精度画像やアニメーションを直接に作成したりと、部品設計や製品開発の分野だけでなく、営業や広告でも利用できます。また、WindowsとMacの両OSに対応している他、音声メッセージ機能を持つなど、メンバー間やチーム間でデータ共有する際にも有効です。
既存の3DCADシステム「ZW3D Standard」を、コストパフォーマンスの観点から再設計されたミドルレンジ3DCADシステムです。3DCAD初心者でも扱いやすいよう直感的な操作が可能となっており、2Dデータや3Dモデルをシームレスに連携させられます。
ビジネスユースとしての機能搭載を前提としながら、コストパフォーマンスを最大限に追求するというコンセプトで開発された機械設計向けの3DCADパッケージです。初心者からベテランまで、ニーズやレベルに合わせて機能拡張を行うこともできます。
米国ポラロイド社が1982年に発売して以来、40年以上も続いているCADシステムのハイグレードモデルです。月単位の契約から年間契約まで任意の期間でサブスクリプション購入を行えます。
日本ポラデジタルが開発・提供しているグラフィックプログラムをベースとして、3Dモデリング機能を搭載した3D CADです。様々なファイル形式を読み込んで操作できる上、3Dモデルの一部を分解して視覚的に確認することもできます。
自動車業界や航空宇宙業界、建築業界など、様々な分野における工業デザインをサポートする3DCADシステムです。直感的な操作もしやすく、1クリックで色々な作業を行うことができます。
電子部品の配電システムなどを設計するために特化している電気CADです。3Dパネルへ部品を配置すれば、システムが自動的に電気回路やケーブルの長さなどを計算して表示してくれます。
ハイレンジ(ハイエンド)/ミドルレンジ/ローエンドとは、それぞれCADのスペックや性能差を示している言葉です。ハイレンジは中でも優れた性能を有しているCADを指しており、様々な作業を行える機能性の充実度だけでなく、大規模アセンブリであっても高速演算による処理を可能とするため、作業効率を高めてユーザーの業務ストレスの工数削減に貢献してくれます。一方で費用面で高額になることが多く、周辺機器についても同レベルの高機能をそろえなければ本領を発揮できないというデメリットもあります。
対するローエンドは、一般的にエントリーモデルと考えられ、機能性に制限や処理速度の限界こそあるものの、コスト的に安価で導入可能なCADといえるでしょう。そのため、扱うデータによってはローエンドで十分という企業も少なくありません。
ミドルレンジはハイレンジとローエンドの中間に位置するCADであり、メーカーによって性能や価格がハイレンジ寄りであったりローエンド寄りであったりします。
フィーチャーベースとダイレクトモデリングは、それぞれ3D CADを作業工程で大きく分類した場合のカテゴリです。
フィーチャーベースは、あらかじめ用意されているパーツをベースとして、それらを組み合わせたり加工したりすることで、目的の製図を行っていきます。基本となるベースがすでに用意されているので、技術的に未熟な人や、オリジナルの図面アイデアを生み出せない人であっても、目的の成果物を実現することが可能です。ただし、最初に想定されている範囲を超えた製図を行えないというデメリットもあります。
一方、ダイレクトモデリングとは、文字通り自分の技術や感性をもとにして、ダイレクトにモデリングを行ってくCADです。発想力や製図力が必要になりますが、オリジナリティを持った成果物の完成を目指せます。
ヒストリーとノンヒストリーもまた、3D CADを分類するカテゴリの一種です。
ヒストリー(ヒストリーベース)はフィーチャーベースとも呼ばれるCADで、文字通り作業履歴(ヒストリー)を残していくタイプのモデルです。作業履歴が残るので、複数の人が製図の過程を確認しやすく、また後々に修正が必要になった時にも速やかに修正箇所を特定して作業することができます。
ノンヒストリー(ノンヒストリーベース)はその反対で、作業履歴をその都度残さないタイプのCADです。ヒストリーと異なり作業履歴にメモリなどを割く必要がないため、低スペックのパソコンなどでも比較的スムーズに製図作業を進めることが可能です。ただし、一方で修正が必要になった時に、場合によっては大がかりな修正作業が必要になるリスクもあります。
ヒストリーにするかノンヒストリーにするかは、リスクマネジメントを考慮しつつ、チームとしての作業の進め方や、使用している機器のスペックによって適宜選択するようにしてください。
トップダウン設計とボトムアップ設計は、それぞれ3D CADの設計手法の分類です。
ボトムアップ設計とは、まず各部位のパーツを設計し、最終的にそれらを完成品として組み上げるタイプの設計手法です。イメージとしては、あらかじめパーツが用意されているプラモデルや積み木であり、一般的にはボトムアップ設計による製図が行われます。
トップダウン設計とは、まず完成品のイメージがあった上で、それを実現するにはどのようなパーツが必要なのか、構成部品を順に分解して設計していくタイプの設計手法です。明確な完成イメージが先にあったり、特定の条件に合わせて設計したりしなければならない場合に、トップダウン設計が活用されます。
ボトムアップ設計とトップダウン設計は、どちらが優れているというものでなく、あくまでも設計目的や作業工程によって選択されるものです。ただし、トップダウン設計に関しては、CADによって機能が装備されていないこともあるため、CAD選びの際は注意しなければなりません。
3D CADにおける「アセンブリ」とは、「組み立てられたパーツ」を意味しており、ある程度の部品のまとまりとして考えられます。
アセンブリモデリングは、最終的な完成品を「トップアセンブリ」、複数の部品が組み合わさっているもののそれ単体では機能を発揮しない構成要素を「サブアセンブリ」と呼び、サブアセンブリを組み合わせながら、相互干渉が起こらないかどうかや、完成品が正常に作動するかどうかを確認することが可能です。
アセンブリ単位による設計と、それぞれのアセンブリの相互関係についてシミュレーションを可能とする機能こそが、3D CADの優れたメリットともいえるでしょう。また、さらに一部のアセンブリの数値を変更することで相関・連動するパーツやアセンブリの数値も自動的に変更してくれるような、高性能CADも登場しています。
ソリッド(ソリッドモデル)とは、3次元的な厚みを持って構成されるモデルであり、質量や体積といった概念も組み込みながら、製図を進めていきます。例えば3Dプリンターで出力するためのデータを作成する場合、画面上で厚みや密度、体積といったものが再現されていなければならず、これらはソリッドモデルと考えられるでしょう。
対するサーフェスモデルとは、ひとまず物体の厚みなどを無視して、平らな面を組み合わせて設計していく立体モデルです。インテリアやキャラクターといったもののベースデザインを考えるような時に使用されますが、サーフェスモデルのままでは現実に出力したりシミュレーションを行ったりすることができないため、最終的にソリッドモデルへ変換されることもあります。
また、これらの他にワイヤーフレームモデリングという手法も存在しています。
3D CADの製図方法としては、あらかじめパーツが用意されている「フィーチャーベース」と、一から部品を想像して設計していく「ダイレクトモデリング」という、大きく2種類のモデリング手法がありますが、パラメトリックモデリングは「CADデータの数値(パラメータ)」を変更しながらモデリングしていく、3D CAD独特の製図方法です。
例えば、設計を進めていく中で一部を変更したいと思った時、フィーチャーベースであれば別のパーツを選択したり、ダイレクトモデリングであれば土台や全体とのバランスを考えながら再設計したりしますが、パラメトリックモデリングではサイズに関するデータの数値を変更して、どのような影響が全体に現れるかを確認します。
数値を再設定するだけで設計変更を反映できるため、手間がかからない上、全体を微調整したい時などにも効果的なモデリングです。
カーネルとは3D CADにおける心臓部分であり、CADの機能がプログラミングされている部分です。CADのハイレンジ(ハイエンド)やローエンドといった評価も、一般的にカーネルの性能に応じて分類されています。
カーネルはCADのコア部分です。そのため、完全オリジナルを新しく作るのは多大なコストと労力を要することから、一般的にはアメリカ企業が開発した「Parasolid」や「ACIS(エイシス)」、また国産カーネルであるリコー社製「DESIGNBASE(デザインベース)」といった既存カーネルを活用した上で、メーカーごとにCAD機能を搭載させるといった販売手法が採られています。
なお、メーカーによっては独自カーネルを採用している場合もあります。
2D CADは手作業による製図作業をコンピュータ上で行うシステムであり、3D CADは画面上に3Dモデルを構築して形状や体積・表面積を確認したり、部品の設計や動作シミュレーションを行ったりするためのシステムです。
単純な部品の設計や製図には比較的安価な2D CADが使われる一方、直感的なモデリングや複雑な部品の動作検証には3D CADが用いられており、それぞれを使い分けるにはシステムを導入する目的や、どのような部品・機械を設計したいのか、きちんとニーズを把握した上で必要な機能とコストメリットを確認することが重要です。
自社で利用している3D CADと、クライアント企業の3D CADが異なるソフトであった場合、そのままデータをやり取りしても、データが読み取れなかったり大幅に修正が必要になったりと、情報交換におけるリスクが増大します。そのため、異なる3D CADを使っている場合は、あらかじめ互いにデータ交換を行えるようファイル形式をそろえることが必要です。
3D CAD間でデータをやり取りする際は、「中間ファイル」と呼ばれる互換性に優れたファイル形式を利用することが一般的です。ただし、中間ファイルの互換性は絶対的なものではありません。まずは中間ファイルやデータ交換の基本を把握しておき、適切なファイル形式を選択しながらリスクを軽減しましょう。
ものづくりの現場においては部品の設計やデザイン、モデリングに活用できるCADシステムの他にも、CAMやCAEといったシステムが活用されています。しかし、CAD/CAM/CAEにはそれぞれ特徴や用途の違いがあり、事前にきちんと詳細を把握しておかなければ各システムを適切に運用することはできません。
製図やモデリングに用いるCADシステム、機械設備などに合わせた加工プログラムを作成するCAMシステム、そして必要とする部品や機構の性能をシミュレーションするためのCAEシステムと、製品には違いや目的が定められています。
また、CADとCAM、CAEにはメリットだけでなくデメリットもあり、まずはしっかりとそれぞれのシステムを理解しておきましょう。
1970年代に流行したワイヤーフレームモデルは、点と直線によって3次元形状を作成していくモデリング手法です。「面」を使って表現するサーフェスモデルや、物体の中身まで作成するソリッドモデルと異なり、枠線だけを重ねて3Dモデルを作るためシステムが単純化されており、画像処理能力や演算能力の低いパソコンでも使用しやすいことが特徴です。
最も初期の3Dモデリング手法として重要なワイヤーフレームモデルですが、直線中心のモデリングとなるため曲線を表現できなかったり、そもそも面が存在しないために表面積を計算できなかったりと不足が多いことも事実です。そのため、現代の3D CADシステムではあまり使用されていません。
クラウドとは、インターネットやコンピューターネットワーク上にあるサーバーへデータを保存して、オンラインでシステムを使用・管理するサービスを指します。
3D CADのクラウド化を行うと、3D CADシステムのデータや作成した3Dモデルをクラウドサーバーへ保存するようになり、事業所や自宅にあるパソコンでデータを管理する必要が解消されます。また、ネットワーク環境へアクセスできれば、普段に使用しているパソコンだけでなくタブレットなどのモバイル機器でも3D CADを利用できる点は重要です。
ただし、ネットワークへ接続できなければシステムを使用することができないため、クラウド化には用途や利用環境を考えることも大切です。